こんにちは。ピアノスクールかなでのかなです。
「もっと歌わせて」「メロディを歌うように弾いて」
レッスンでよく聞く言葉ですが、**“歌わせる”って実際どういうこと?**と戸惑う生徒さんも多いと思います。
私はいつも、“歌わせる”というのは、感情だけでなく「音の流れを自然にすること」だと伝えています。
ただ気持ちを込めるだけではなくて、呼吸と動き、タイミングと間合い、すべてが自然な流れになるようにコントロールすること。
よくあるのは、音を並べて弾いているけれど、どこにも向かっていない演奏。
どんなに綺麗な音を出しても、「どこからどこへ向かっているか」というフレーズの線がないと、音楽はただの音の連なりになってしまいます。
歌わせるにはまず、**「どこが山か、どこが落ち着く場所か」**を感じること。
そして、スラーを「息」として捉えること。
私はよく生徒に「スラーを息の長さとして感じて」と伝えます。
息継ぎがあるからフレーズに間が生まれ、音に方向ができる。
その“息”の感覚を手に伝えていくことで、はじめて**「歌っているように聴こえる演奏」**が生まれてきます。
そしてもうひとつ大事なのは、「聴く力」。
他の演奏をたくさん聴いて、自分がどんな音楽に感動するか、どんな間に心が動くかを体験すること。
聞くことでしか感じ取れない“音楽性”の感覚を、演奏に移すためには、それを再現するだけのテクニックも不可欠です。
つまり、音楽性を感じる力と、それを形にできる身体の技術――この両方が揃ってこそ、歌わせる演奏が可能になります。
また、最初から速く正確に弾こうとすると、こうした「間」の感覚が失われやすいんですね。
だからこそ、最初の段階でゆっくり・丁寧に、スラーの流れに合わせて“息のリズム”を体にしみこませておくことが大切です。
美しい演奏には、自然な呼吸と間があります。
それは演出ではなく、**音楽の構造そのものに沿った「必然的な流れ」**なんです。
「歌わせる」の正体は、音を美しく並べることではなく、意味ある流れとして“生きている音”にすること。
それは、あなたの息づかいと心が、そのまま音になっていく感覚です。
かな